このところ、生活者に働きかける際に、「プロモーション=マス媒体の広告」という単純な図式だけでは成果が出ないケースが増えてきました。
ネットでのクチコミを誘発したり、メディア受けするネタを仕込んでパブリシティ効果を狙ったりと、様々な手法がマス広告にプラスされたり、置き換えられたりしています。
そんな中、フェザンレーヴが取り組んだ面白い施策があります。なんでも、「FXのプロモーションのためにゲームを作った」ということなのですが…。
詳しい話を、営業担当の山本晃史に話を聞きました。
-そもそも、なんでゲームなの?という疑問もあるのですが、まずは最初に、ことの発端から聞かせてください。クライアントの株式会社マネーパートナーズ様(以下「マネーパートナーズ」)から、「面白いプロモーション施策」提案の依頼があったんですよね?
いや、違いますね。そもそも、マネーパートナーズとのお取引自体、全くありませんでしたから。
-えっ!? どういうことでしょうか?
元はといえば、FXなど金融関係のクライアントへのアプローチ方法を考えているときに、ふと「ニンテンドーDS(以下「DS」)ってどうなんだろう?」と思い浮かんだのが始まりですね。
2008年の話なのですが、当時はDSの全盛期で「脳トレ」「漢検」などの教育系ソフトが大ヒットしていて、証券会社が監修する株式運用トレーニングソフトなども発売されていたんです。
まだFXをやっている人も少なく認知も低い時期だったので、啓蒙的な意味も含め、FXのクライアントに提案するのは「アリ」じゃないかと考えました。
早速、ゲーム業界の人へのヒアリングなどでリサーチをしまして、DS市場のことや、開発にかかる費用や期間、流通事情、先ほどの「株式運用トレーニングソフト」の販売状況などですね。
-ちなみに、DSの市場はどのくらいだったんですか?
当時、日本国内だけで2,550万台が販売されていて、FXのターゲットとなる20代以上のユーザーはDSユーザー全体の約60%ということで、1,530万人いる、という計算でした。
-なるほど、FXのプロモーション対象としては十分に大きいパイですね。
そうなんですよ。それで、リサーチの結果「これはイケる!」ということで、提案に先駆けてまず行ったのが、開発してくれる会社の確保です。
色々なツテを辿った末、最終的に元気株式会社様(以下「元気」)にご協力いただけることになりました。教育系ソフトの開発実績があったのと、開発だけでなく流通まで任せることができたのが大きなポイントでしたね。
費用の面やスケジュール感も分かり、それを踏まえて提案書を作成しました。
-では、これで各社への提案活動がスタートですね。
はい。でも、当然といえば当然ですが、なかなか決まりませんでした。門前払いをされたり、良いところまで進みつつも先方の事情でキャンセルになったり…。
-そんな中、辿り着いたのがマネーパートナーズだった、と。FXの大手ですよね。
そう、当時株式上場していたFXの会社は3社くらいしか無かったんですが、そのうちの1社でした。
先方のマネージャーにお話ししたところ、ちょうど「何か今までに無い施策を行いたい」とお考えだったようで。また、その方がゲーム好きだったため、すぐにゲームのイメージがついたらしく、非常に乗り気になってくださいました。
なんと、2回目の打ち合わせに、先方の社長様が同席してくださったんです。
-いきなり社長様と打ち合わせですか!
そうしたら、なんと社長様もゲーム等に理解のある方で。(笑)「じゃあ、やってみよう!」と即断していただきました。
こちらも急ピッチで具体的な企画書を作成し、元気にも開発ラインを確保してもらって。プロジェクトメンバーも決めて、早速開発をスタートさせました。
-開発はどのような感じで進めていったんでしょう?
毎週、クライアント・開発会社・弊社の3社による定例会を実施し、そこで進捗の報告や監修事項のやり取りなどを行っていました。クライアントからはマネージャーと執行役員の方にご参加いただいたのですが、お二人とも非常に協力的で理解のある方だったので、非常に助けていただいたと実感してます。本当に、このお二方がいらっしゃらなければ、この企画自体成り立たなかったと思います。
定例会が終わったあとは、完全なプライベートとして飲みに行くこともありましたね。締めるところは締めつつも、ギスギスしたところは無い現場でした。
-チームの雰囲気が良さそうですね。ということは、開発はスムーズだった感じでしょうか?
そうですね。ゲームの開発は、ほとんど予定通りのスケジュールで進みました。着手してから約1年で発売できる状態になりましたから。
あと、開発だけでなく、ゲームソフトの販促プロモーションについても弊社で企画し、全てお任せいただいたのですが、これは私のチームだけでなく、社内の他のチームとも連携して全社的に取り組ませていただきました。
-具体的には、どのような施策を打ったのでしょうか?
大人向け、特に若手ビジネスマンをメインターゲットとしたので、交通などの屋外広告や、ビジネスマン向けフリーペーパーでの編集タイアップなど、彼らが日常で接する場所を中心に広告を打ちました。派手なところだと、電車ジャックも実施してます。
実は、FXをはじめとする金融関連の業種は、広告を出稿できる場所の制限が結構あるんですよね。でも今回は、あくまで「DSソフトのプロモーション」ということで、普段の制約から解き放たれて自由に活動できました。だから、普段はFXについての情報を目にしていない人が「マネパ(マネーパートナーズの略称)」の名前を知るきっかけになり、ブランディング効果もあったのではないでしょうか。
何よりも重要視したのが「ゲーム購入者に実際のFX口座を開設していただく導線」です。そのために、口座開設によるキャッシュバックを訴求し、パスコードを印刷したチラシをパッケージ内に封入しました。結果的には、購入者の何割かの方が口座開設をしてくださりましたね。
あとは、ゲームソフト専用のwebサイトを開設し、ゲームと連動したランキング形式のキャンペーンを実施したり、口コミマーケティング(ブロガーを巻き込んだ企画)等も実施していました。
-ちなみに、広告クリエイティブは「FXゲームで金トレ」というキャッチコピーで、筋トレをしている人のビジュアル。これって…。
そうなんです。正直に言って、ダジャレです。(笑)
-(笑) えー、そういう形で販促プロモーションの内容も無事に決まり、開発開始から1年で発売となったわけですね。
それが、そうならなくて…。全て段取りを整えた段階で、他社から某有名DSタイトルが同時期の発売予定だということが判明したんです。
このまま真っ向から勝負すると、某有名DSタイトルに押されて、小売店の仕入れ本数が少なくなってしまう恐れがあったので、泣く泣く発売時期を約3ヶ月後ろにずらしました。
-なるほど、意外なところから伏兵が。ギリギリのところで難を逃れたわけですね。
そうだったら良かったんですが…。なんと、その某有名DSタイトルの発売が予定よりも3ヶ月遅れたため、結局同時期の発売になってしまいました…。
-そ、そんなオチが!
-「プロモーションやブランディングのためにゲームを作る」という手法はあまり一般的ではないと思うのですが、遂行してみた感想はいかがですか?
意外な伏兵には悩まされましたが(笑)、ゲームの力を借りることによって、「マネパ」というブランドを、普段FXに接することの無いDSの一般ユーザーに知らしめる機会を作れたことには、大きな意義を感じています。これは、クライアントや開発会社のご協力と、弊社メンバーの奮闘があったからこそできたこと。どれだけ感謝しても、感謝しきれないくらいです。
あと、このプロジェクトでゲームというツールの持つ力を、すごく実感したんです。それもあって、今はゲームに関連した別のお仕事を進めさせてもらってます。
-別の仕事ですか。またDSのゲームを開発したんですか?
今度のはDSのようなパッケージソフトではなく、ネットゲームですね。
「ネットゲーム上で農作物を育成し、その成果に応じてリアルな野菜が自宅に届く」というコンセプトで、ネットとリアルを絡めたスキームになっています。
こういうオリジナリティのあるコンテンツを、パートナー企業と協働して展開できるのは、やっぱり「マネパ」の経験があったからだと思います。
-実際に野菜が家に届くんですね。ゲーム上とはいえ、「野菜を育てた!」という実感がわきますね。
最終的には「ゲームで作った野菜が届く」という形にしたいのですが、現在はキャンペーン的に‘野菜’や‘はちみつ’が届くという施策にしています。
ゲームを通して、野菜作りの大変さと楽しさを実感してもらえますし、気軽にプレイできるゲームだからこそ、沢山の人にそれを伝えられる可能性を秘めていると思います。
そういう社会的な意義と同時に、企業や団体とのタイアップ展開の可能性もあって、ビジネス的な広がりもありますし。ゲームにばかりこだわるわけじゃありませんが、非常にやりがいが感じられる仕事だと思います。
これからも、コンテンツの持つパワーを最大限に活かせるように、頭と脚をフルに使って動いていこうと思ってます。
山本 晃史(やまもと あきふみ)2007年入社。アカウントサービスグループ所属。
自らの持つ知識や強みを活かし、総合的なプロモーションプランはもちろん、斬新なアイデアやオリジナル性のある企画を提案できるように努めている。


